気候変動について


日本一暑い街、熊谷。2018年に国内観測史上最高気温となる41.1℃を記録しました。
年々勢いを増す猛暑、これまでにない規模の豪雨や巨大台風、それによる洪水・土砂崩れ・停電など、異常気象とそれによる災害が日本でも近年全国的に起こっています。
ここでは、①熊谷市の気候変動の現状、②気候変動による影響、そして③私たちに何ができるのか、についてご紹介します。

①熊谷市の気候変動の現状

熊谷市の平均気温の変化

 熊谷市の平均気温は、1897~2015年の100年間で2.02℃ /100年 、近年の1980~2015年の間では5.18℃/100年ものペースで上昇してきています。この原因は、地球温暖化に加え、都市化やその他の自然現象が影響しているとみられます。

熊谷の気温の推移
出典: 気象庁

熊谷市の真夏日と熱帯夜の日数の変化

 最高気温が30℃以上の真夏日も、夜間の最低気温が25℃以上の熱帯夜の日数も年々増加する傾向にあります。

出典: 気象庁

熊谷市の冬日の日数の変化

最低気温が0℃未満の冬日の日数は減少している傾向があります。

出典: 気象庁

大雪や竜巻など異常気象による被害 

一方で、2016年には異常気象の大雪が降り、熊谷市で62cmの過去最大積雪量を観測し、熊谷ドームや民間施設の屋根が雪の重さに耐えられず潰れ落ちるという被害が起きました。また、2015年には竜巻の発生により、熊谷市だけで376棟の被害が出ました。

大雪でつぶれた熊谷ドーム
雪でつぶれた熊谷ドーム

熊谷市の桜の開花日とカエデの紅葉日の変化

 桜の開花日は早まる傾向があり(50年あたり約7日早くなっている)、カエデの紅葉日も遅れる傾向があります(50年あたり約7日遅くなっている)。

出典: 気象庁

なぜ熊谷市は暑いのか?

 熊谷が暑い理由は、気温の上昇を抑える冷涼な海からの南風が都市部を通過して暖められながら運ばれてくることと、フェーン現象、の主に2つの理由が考えられています。
 まず、熊谷は関東平野の内陸部に位置するため海風の進入が遅くなることから気温が上がりやすくなります。また、海風が東京などの大きな都市を通ってくる間に、 都市部でエアコン・自動車の熱・アスファルトの熱などの人工の熱により気温が高くなる「ヒートアイランド現象」 によって暖められて、気温の上昇を抑える効果が小さくなるので周りに比べて暑くなるのです。
 さらに、熊谷の暑さには「フェーン現象」も影響していると考えられています。(上空の風が関東平野の北側や西側の山を越えた後に 関東平野に吹き降りてくることがありますが、地上は上空より気圧が高いので、吹き降りてくるにしたがって空気は圧縮されて温度が上がります。これを「フェーン現象」といいます。この温度の上がった空気が、熊谷付近に流れこんで気温が上がります。)2007年8月16日に熊谷で、当時の日本の最高気温である40.9℃を記録したのは、このフェーン現象にもよると考えられます。

熊谷が暑い理由1

出典:熊谷地方気象台

②気候変動による影響

 地球温暖化などの気候変動により既に様々な分野に影響が起こっていますが、 温暖化がこのままのペースで進行した場合、 南極やグリーンランドなどの氷河が解けて海面が上昇し、ツバルなどの島国に関しては国土全体が水没する危険性が叫ばれていたり、生態系への影響により様々な動植物が減少することが予測されています。
 これらは決して他人事ではなく、日本でも沿岸部が海面上昇で浸水したり、農作物や魚などに異常が出たり取れなくなるなど、農業・漁業・林業など様々な産業への影響が出たり、豪雨・台風・干ばつ・熱波などの異常気象が頻発して、災害・水不足・健康被害などが起こるリスクがあるのです。

海面上昇によって失われる都市や国

 「最新の調査はこのまま温暖化が進めば急速で止めることができないほどの海面上昇が起きると警告しています。海面水位の観測が開始された1850年以降、これまでに少なくとも世界平均で20センチの海面上昇が記録されており、2000年以降、その増加スピードは加速しています。
 2040年までに約60センチ、2050年までに約90センチの上昇が考えられ、大きな河川が流れる中国やインド、エジプトなどの国々では、60センチから90センチの上昇は、数千万人規模の避難民の発生、多くの農業用地の損失を意味します。海面が1メートル上昇すると、イタリアの都市ベネチアは海に沈んでしまいます 。海面が2メートル上昇した場合、世界で数億人が気候難民になる指摘されています。そして、2.5メートルの上昇では、多くの沿岸都市が水没し、破壊的な結果が予測されます。
 もともと海抜の低い南太平洋に浮かぶマーシャル諸島、ツバル、キリバスやインド洋のモルディブでは、既に国土の一部が水没し、住む場所や故郷を奪われた人々の国内外の避難先への「望まない移住」が始まっています。」

引用元:気候変動で起きる海面上昇について知っておきたい7つのこと - 国際環境NGOグリーンピース STOP 海面上昇を抑えるために - 国際NGOグリーンピース

他人事ではない。日本にも迫る海面上昇

 「昨年の日本沿岸の海面水位は、過去30年間の平均と比べて8.7センチ高く、過去最高を記録しました。このまま対策が取られずに海面上昇がこのまま続けば、今から9年後の2030年には全国で影響を受ける人は600〜700万人(日本の総人口の5.4%)に及びぶと予測されています。さらに、2100年までには日本の人口の約30%が住む場所を失うリスクがあり、大都市圏を中心に膨大な経済損失が予測されます。」

国際NGOグリーンピースのホームページでは、2030年と2050年の日本で海面上昇による浸水や高潮の脅威にさらされるエリアと、影響を受ける人口を見ることができる海面上昇シミュレーションマップが公開されています。

引用元:気候変動で起きる海面上昇について知っておきたい7つのこと - 国際環境NGOグリーンピース STOP 海面上昇を抑えるために - 国際NGOグリーンピース

21世紀末の埼玉県の気温の予測

 地球温暖化がこのままのペースで進行した場合、今後100年で埼玉県の平均気温は約4℃上昇し、熊谷市の平均気温は屋久島(鹿児島)と同じくらいになる予測です。また、熊谷市の猛暑日は100年で今より40日増加し、 真夏日と夏日の日数は今より60日増え、熱帯夜の日数も70日増加する予測になっています。これにより、産業や生態系などへの大きな影響と健康被害が増大することが考えられています。

気温の予測
出典: 気象庁

熱中症による年間死亡者数の推移

 毎年勢いを増す猛暑。熱中症による死亡者が年々増えており、2010年以降は毎年約500人~1,700人の方がお亡くなりになっています(日本全体)。
 温暖化がどの程度猛暑に影響しているかについて、気象庁や気象研究所などがスーパーコンピューターを使った最新の手法で調べたところ、もし温暖化がなかったとしたら、2018年の記録的な猛暑は起こる可能性はほぼゼロだと推定されました。このまま温暖化が進めば、猛暑による熱中症などの健康被害はさらに拡大すると考えられます。

(出典:猛暑、温暖化なければ起きなかった 世界の損失25兆円 [気候危機、今こそ行動を]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

埼玉県の21世紀末の降水量の予測

 近年、これまでにない規模の大雨や台風の発生による洪水や土砂崩れなどの災害が目立ちますが、 地球温暖化がこのままのペースで進行した場合、滝のように降る大雨(1時間あたりの降水量が50mm以上)の発生が埼玉県では今後100年で約2倍になる予測で、 大雨の増加による災害の発生が懸念されます。その一方で、降水の無い日も増加する予測で、 水不足のリスクも懸念されています。どちらの場合も、広い分野の産業にも影響が出ることが考えられます。

降水の予測
出典: 気象庁

コメなどの農作物への影響

 温暖化の影響により、農作物の生育不良・着果不良・着色不良・害虫被害などが起こり、品質や収穫量に影響が出ています。日本人の主食であるコメは、高温になると受精障害により実が入らない不稔籾 (もみ) や白未熟粒と呼ばれる白く濁った米が増えてしまうため、品質が大きく低下します。
 埼玉県はホウレンソウの生産量が全国2位ですが、気温が3℃上昇すると病害や生育不良により成長量は12~18%程度減少する予測で、温暖化が進行すると生産量の減少が予想されます。ナスやトマトも着花・着果不良などの生育不良が懸念されています。
また、ブドウは埼玉県の観光農業の主力品目で、特に「巨峰」の生産量が多いのですが、気温が30℃以上になると着色不良が発生しやすくなり、品質と商品価値が大きく下がってしまいます。ちなみに、平均気温が6〜14℃で育つリンゴは、温暖化が進むと長野県での生産が難しくなる予測で、日本で生産できない農作物も出てくるかもしれません。。。

漁業への影響

 近年、サンマの記録的な不漁により、各地で行われるサンマ祭りが中止になったり冷凍品の提供がされたことが記憶に新しいと思います。日本の魚の水揚げ量は年々減少しており、特にサンマ・サケ・スルメイカは2014年以降の5年間でなんと74%も減少しています。水産庁は、温暖化による海水温の上昇や海流の変化が不漁の原因だとしており、魚の成長する時期や住む海域が変わって餌の確保が難しくなったり、成長する前に捕食されるリスクが高まったため漁獲量が減ったと分析しています。
 同様に、温暖化による海水温の上昇や海流の変化により、ウナギやマグロの産卵場所や回遊経路に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されており、漁獲量の減少や絶滅の危機も叫ばれています。日本の食文化を代表する美味しいお刺身やうな重が食べられなくなる日が近いうちに来るかもしれません。。。

(出典:日テレニュース24、WWFジャパン

③わたしたちができること

 地球温暖化の原因とされている温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、フロンなど様々なものがありますが、中でも温室効果ガスの排出量の8割近くを占める「二酸化炭素(CO2)」 は最も温暖化への影響度が大きいガスと言えます。産業革命以降、人間の活動によって化石燃料が使用されてCO2の排出量が急増し 、またCO2を吸収できる唯一の存在である森林の激減などにより、大気中のCO2濃度も右方上がりに増加しており、 産業革命以前と比べると40%も濃度が増加しています。

私たちには関係ないことなのか?

 日本は現在、年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、排出量は世界でなんと第4位になっています。温暖化の深刻な状況に対して、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすること、つまり脱炭素社会の実現を目指すことを2020年に宣言しました。まずは今から9年後の2030年度までに、温室効果ガスを2013年度比で46%削減する目標を立てています。

 CO2は産業部門だけの問題かというとそうではありません。化石燃料を燃やして作る電力を私たちは家庭で使っていますし、車に使われるガソリンも化石燃料から精製されたものです。森林の減少についても、都市化による森林破壊や、建材を始めとした木材製品の生産により減少しています。
 また、日本の部門別の二酸化炭素排出量の推移をみると、産業部門の排出量は年々減っていますが、家庭部門や業務その他の部門(商業・サービス・事業所等)は増加しています。都市活動に係わる「家庭部門」「業務その他の部門」「運輸部門」を合わせると、CO2排出量全体の約半分を占めることになります。つまり、私たちがどう生活するかが CO2 の排出に大きく関わると言えるのです。

私たちは何をすればいいのか?

 では、私たちは具体的にどのようなことをしたらいいのでしょうか?家庭からのCO2排出量の用途別内訳(次の円グラフ)をみると、ヒントが見つかるかもしれません。
 電気を使う「照明・家電製品」からの排出量が最多で約30%、次に多いのがガソリンを使う「自動車」からの排出量が約26%、そして電気やガスを使う「暖房」が15%、ガスを使う「給湯」が14%、と続いています。
 家庭から排出される CO2 のほとんどは、電力とガソリンとガスの消費からきていることがわかります。そのため、特に消費量が多い、電気やガソリンの消費を減らす「省エネ」を行うことが大事でしょう。
また、現在は日本の電気は約8割が石炭を燃やして作る火力発電によって発電されていますが、2016年の電力自由化以降はCO2を排出しない再生可能エネルギーを使った電力会社も多く出てきていますので、そのような電力会社を利用することもとても有効だと言えるでしょう。ガソリンの消費についても同様に、CO2を排出するガソリンを使わず、 CO2を排出しないエネルギー源の自動車を使うことなども有効でしょう。
 いずれにしても、生活を一気に変えることは難しいと思いますので、まずは自分ができる身近なところから、小さなアクションをコツコツと積み上げていくことが一番大事なのではないでしょうか。
 

リビングやキッチンでできること

・エアコンの温度は、冷房は28℃以上、暖房は20℃以下に設定する。
・白熱電球を高効率蛍光灯やLED電球に交換する。(LEDの電力は白熱電球の5分の1以下)
・使わない照明をこまめに消し、コードを抜いておく(待機電力が約6%ある)。
・冷蔵庫は適切な温度に設定し、扉をむだに開閉せず、物を詰め込みすぎないようにする。
・炊飯器・電気ポットはできるだけ保温機能を使わず、温める時は電子レンジを使う。
・すだれ、よしず、緑のカーテン(ゴーヤなど)を付けて、部屋に入る熱を防ぐ。
・ご飯は残さずに食べてフードロスを減らし、ゴミの分別を徹底し、生ごみはコンポストで処理する。

水まわりでできること

・お風呂は給湯温度を不必要に高く設定せず、お湯の量を減らし、間隔をあけずに続けて入る。
・節水型のシャワーや蛇口を使う。
・トイレは便座や洗浄水の温度を下げ、暖房便座はこまめに蓋を閉める。
・洗濯は風呂の残り湯を活用し、できるだけまとめて洗う。
・洗剤や石けんは、排水処理での負担が少ない生分解性が高いものを使う(排水は浄水場できれいにするのにもエネルギーが使われます。)

お出かけ時・買い物でできること

・できるだけ自動車は使わず、徒歩・自転車や公共の交通機関を使う。
・エコドライブを心がける(急発進・急加速・急ブレーキをしない。アイドリングをしない。使わない荷物は降ろす。)
・マイバック、マイ箸、マイストロー、水筒などを持ち歩く。
・輸送時のエネルギー負担が少ない「地産地消」を心がけ、「旬のもの」を買う。
・使い捨ての製品はなるべく買わず、リターナブル容器に入った製品や、エコ製品・リサイクル製品を買う。

その他

・電気は CO2 を排出しない再生可能エネルギーを使った電力会社を利用する。
・古い家電製品を省エネタイプのものに買い替える。
・自動車はガソリンを使わない電気自動車などに乗り換える。
・家に断熱材や二重サッシを取り入れて断熱性を高め、消費する電力を削減する。また、太陽光パネルや太陽熱温水器を取り入れる。(最初は費用がかかるが、長い目で見れば経済的。)

出典:地球温暖化の防止に向けて:一人一人にできる対策 |WWFジャパン家庭でできる地球温暖化防止のとりくみについて - 岡山県ホームページ(新エネルギー・温暖化対策室)

お役立ちリンク

COOL CHOICE (環境省)
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/
環境省が提供しているウェブサイトで、地球温暖化についての様々な情報や、キャンペーン、アクションについて知ることができます。

Coolchoice-banner

チーム・マイナス6%
https://www.team-6.jp/
温室効果ガス排出量を1990年に比べて6%削減することを目標に、日本政府が主導したプロジェクト「チーム・マイナス6%」。地球温暖化についての情報が掲載されています。

JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)
https://www.jccca.org/
JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)のホームページ。地球温暖化防止に関する様々な情報やデータを得ることができます。

環境省 脱炭素ポータル
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/index.html
2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、脱炭素(カーボンニュートラル)に関する政府の取り組みについてのページです。